楽天・三木谷氏 宇宙から電波を降らし日本を覆う「スペースモバイル」計画

2018年の年末、
東京・二子玉川にある楽天グループ本社4階の
大会議室は600人の社員で溢れ返っていました。

楽天が創業時から、
毎週、
火曜日の朝8時に開いている「朝会」では、
会場一杯にパイプ椅子をずらりと並べて1000人が座ります。
机を入れて作業をするとなると、
せいぜい600人で満杯です。
コロナ前だから許された過密状態です。

彼らはEC(電子商取引)サイトの楽天市場、
楽天トラベル、
楽天カードなど、
総員1万人を超える楽天グループの
各事業部からかき集められた精鋭たちです。
しかし集められた新部署での仕事は
携帯電話のアンテナを建てることであり、
それに関しては全員がズブの素人です。

それでも士気は高い。
大会議室には毎朝、
楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史が顔を出し、
進捗状況を確認するとともに、
いち早くアンテナを建てることが
楽天グループにとってどれほど大切であり、
日本の通信産業、
ひいては情報産業全般にとってどれほど大きな意味を持つ
仕事であるかを熱弁したからです。
この部隊を立ち上げる時、
三木谷はグループの事業部に対して、
こう言いました。

「仕事のできるやつから順に送ってこい」

楽天クラスの大企業が新しい事業を始める時、
まずは既存の事業部から人材を募ります。
しかし現場を預かる管理職は、
持ち場の戦力を落としたくありません。
勢い「下から順番」に人材を供出します。
そんなことは百も承知。
だから三木谷は「エースを出せ」と厳命しました。
そして自らもそれを実行しました。

「三木谷の懐刀」と言われていた楽天市場のエース、
矢澤俊介を楽天モバイルに送り込んだのです。

矢澤は2005年、
英会話スクールのNOVAから楽天に転職しました。
物腰は柔らかですが、
狙った客は必ず落とします。
「営業の矢澤」の異名が楽天社内で知れ渡るのに、
さして時間はかかりませんでした。
2012年、
三木谷はそんな矢澤を執行役員 楽天市場事業営業統括に抜擢します。
入社7年目、
34歳の執行役員の誕生は世間を驚かせました。

楽天の祖業であり稼ぎ頭でもある楽天市場事業は
三木谷の金城湯池です。
だが今や楽天グループはECに加えカード、
証券からトラベル、
サッカー、
野球まで70に及ぶ事業を抱えるネット・コングロマリットです。
多忙を極める三木谷の手足となり、
最重要事業を切り盛りしてきたのが矢澤です。

はじめの数ヶ月は兼任だった矢澤をモバイル専任にする時、
三木谷はその真意を短い言葉で矢澤に伝えています。

「ここが勝負どころだからな」

エースを楽天市場から引き離してモバイル事業に送り込んだのだから、
これ以上の本気はありません。

「このアンテナ、もう少し小さくならないか。
そうすればもっとパパッと取り付けられるだろ」

三木谷は矢澤を連れてアンテナ建設の現場を訪れると、
設置工事に手間取る作業員を見て作り直しを指示しました。
一事が万事。
三木谷の経営は自分の手足を動かす「ハンズ・オン」が原則です。

楽天は2005年、
博多駅前に本社を置く創業42年の老舗信販会社、
国内信販(現楽天カード)を買収して信販事業に進出しました。
設立7年目のベンチャーである楽天に買収されるくらいだから、
国内信販の経営内容はガタガタです。

「こんなもの、すぐに撤去しろ!」

買収が決まって初めて国内信販の本社を訪れた三木谷は激怒しました。
赤いフカフカの絨毯を敷き詰めた役員フロアは、
どこの大銀行の頭取室かと思うような豪華な内装でした。
三木谷はお公家様のような古手の役員を一掃し、
若手を中心に立て直しに入ります。

2003年にオリックス・クレジットから引き抜いた
穂坂雅之とともに毎週のように博多に入り、
残った社員と話し合いながら立て直しの道を探りました。
行き帰りの飛行機の中で資料と睨めっこし、
少しも休もうとしない三木谷を見て穂坂は感心した。

「大したバイタリティだ」

買収から16年経ち、
楽天カードは2021年6月に発行枚数2300万枚を誇る
日本一のカードになりました。

三木谷の経営は泥臭い。
奇策を弄するのではなく、
一つずつ問題点を洗い出し着実に解決していく。
「夏まで」としていた人口カバー率96%の目標は、
世界的な半導体不足の影響で「年内」にずれました。
一つ解決すればまた一つ課題が発生する。
それでも三木谷は嬉々としてやっている節があります。
ある日、
筆者とのインタビューの途中で三木谷はこう言いました。

「這いつくばって進むのはウチの得意技。
こういうのが楽しいんだよなあ」

鬼軍曹の三木谷が率いる楽天モバイルは、
匍匐前進でひたひたとNTTドコモ、
KDDI、
ソフトバンクの3メガに迫っています。
ですが危機感は薄い。
ある3メガの幹部はこんな言葉を漏らしています。

「96%と言ってもね、そこからが大変なんだよ。
残り4%のために我々はどれだけの時間と金を使ってきたことか」

人口が密集した都市部はアンテナ1本で何百、
何千の利用者をカバーできますが、
過疎地や離島では利用者がまばらになります。
普通のやり方では、
残り4%の引き上げに、
それまでの3倍のコストと時間がかかります。
地道な地上戦を繰り広げてきた楽天は、
ここで空中戦に打って出ます。
「スペースモバイル」計画です。

米国の新興衛星通信事業者AST&サイエンスとの協業で、
高度約730㎞の低軌道に人工衛星を打ち上げ、
通常のスマートフォンで直接通信できるようにします。
衛星電話は昔からありましたが、
高価な専用基地局と端末が必要です。
人工衛星と普通の携帯電話で
直接通信できるサービスは過去に例がありません。

ASTの創業者、
アベル・アベランはベネズエラで生まれ同国の
シモン・ボリバル大学を卒業したあと、
米国に渡って人工衛星ビジネスの世界に入りました。
大手衛星通信会社を渡り歩いたあと、
AST&サイエンスを設立します。

アベランが挑戦するまで低軌道とはいえ
730km離れた衛星がスマホの微弱な電波をキャッチするのは
「不可能だ」と考えられてきました。
イーロン・マスクが率いる米SpaceX(スペースX)の
巨大通信衛星網「スターリンク」や、
ソフトバンクが提携する英ワンウェブなどは、
衛星通信専用の周波数帯と専用端末を使います。
しかし、
これではコストが高くつきます。

アベランは全長24mもの巨大なアンテナを宇宙に浮かべることで、
地上にある携帯電話の微弱な電波を拾うことを思いつきました。

このとてつもないベネズエラ人(現在、国籍はアメリカ)と
三木谷はすぐに意気投合し、
楽天は2020年、
ASTに出資しました。

「宇宙って言うと大袈裟に聞こえるけど、
電波にとって700kmなんて目と鼻の先。
宇宙から電波を降らせば、遮る建物はないからね」

このプロジェクトが成功すれば日本列島をすっぽり覆う
面積カバー率100%のネットワークが完成します。
楽天とASTは年末にも日本での実証実験を予定しています。
地上にアンテナを張り巡らし、
宇宙に衛星を上げるにはとにかく金がかかります。
3月12日、
楽天は「第三者割当増資で2423億円を調達する」と発表しました。

これが思わぬ波紋を呼びます。
出資者の中に中国ITのジャイアント、
テンセント・グループの子会社が入っていたものだから
「経済安全保障」を唱える人々が
「中国に情報が漏れる」と騒ぎ始めたのです。

テンセントの楽天への出資比率は3.65%。
この程度の出資比率で経営に介入できるようなら、
世界中の企業がアクティビスト(物言う株主)の言いなりですし、
あらゆる企業が簡単に中国に支配されてしまうでしょう。
「テンセントが楽天の顧客情報を盗む」と騒ぐのは、
ビジネスの現場を知らなすぎる論調です。
テンセントの目的は楽天の株価が上がったところで
売り抜けて利益を出すことでしょう。
つまり単なる「投資」です。

テンセント以外の出資者は日本郵政と小売の世界最大手ウォルマート。
出資が決まった時、
三木谷は
「日米中の巨大企業が楽天の将来性を買って投資してくれた」
と誇らしげに語っています。

「日米両政府が楽天・テンセントの動向を共同監視する」
という報道が出た時には、
三木谷はキョトンとしていました。
実際には監視と言っても楽天が定期的に政府にレポートを出す程度なので、
ビジネスに影響はなさそうです。

何か新しいことをするたびに世間に叩かれ、
泥にまみれて匍匐前進しながら、
衛星を見上げる。
そんなヒリつく日々を三木谷は「楽しい」と言います。
その生き様は起業家そのものです。

孫正義にも、
かつてそんな日々がありました。

引用元:https://www.moneypost.jp/828904

まとめ

この記事によりますと、
楽天はAST&サイエンスと協業して、
通信衛星とスマホを直接通信できるサービスを
考えているそうです。
このサービスには、
とても夢がありますね。
このサービスで、
人口カバー率が100%に達成されるそうなので、
大歓迎です。

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