イランでは「あつ森」や『Ghost of Tsushima』が人気、東南アジアや中東はインディーもスゴい!新興アジア諸国のゲーム事情【CEDEC2021】

ゲーム業界の関係者たちが集い情報交換を行うカンファレンス
CEDEC 2021ではさまざまなセッションが行われますが、
個人的にとても興味深い内容だったのが、
今回レポートする「新興アジア諸国のゲーム産業・市場の現在」です。

おそらく多くの読者は、
ビデオゲームを楽しんでいる国といえば
欧米・中国・日本などを思い浮かべるでしょう。
しかし、
タイやベトナムはもちろん、インド、
バングラディシュといった新興アジア諸国の人たちもゲームを楽しんでいます。
しかもその人口は、
欧米や中国の数倍にも及ぶといいます。

さらに、
国によってはインディーゲームの制作も盛んだそうです。
たとえば『コーヒートーク』はインドネシアの
インディーデベロッパーToge Productionsが制作しているように、
大きな成功を掴むデベロッパーも増えつつあるといいます。
そんなあまり知られていない世界を覗けるのがこのセッションです。

登壇者と、今回語られる新興アジア諸国の国々について

佐藤翔氏。各国でゲーム関連のイベントに登壇しているほか、
マーベラス主催のインキュベーションプログラム「iGi」の運営にも関わっています。

この講演を行ったのは、
コンテンツビジネスの海外進出を支援する
ルーディムス株式会社の代表取締役である佐藤翔氏。
佐藤氏が実際に海外を渡り歩いて得た情報を共有してくれるだけあって、
ディープで意外な内容ばかりが発表されていました。

今回のセッションでは、

  • 東南アジア(タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピンなど)
  • 南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカなど)
  • 中東(アラブ諸国、イラン、トルコ、イスラエル、カフカス諸国など)

といった新興国それぞれの現在の状況が発表されたほか、
そこで芽生えているゲーム作品についての紹介が行われました。

新興アジア諸国のゲーマーは欧米や中国の数倍となる50億人!ただし課金はあまりしない

さて、
そもそも新興国のゲーム市場はどれくらいの大きさなのでしょうか。
かつては2000億円前後で、
映画などの娯楽が強いインドで300億円と小さめなものだったのですが、
ここ6年で市場規模はほぼ倍増。
東南アジア、中東、中南米、
東欧はそれぞれ3000億後半~4000億円代程度になっているといいます。

どこの国も同じような伸び幅を記録しており、
新興国全体で1兆8000億円ほど。
とはいえ、
これ自体は極端に大きくなく、
すべて合わせてようやく日本やヨーロッパの国と並ぶくらいです。

新興国は日本や欧米に比べると通信・決済のインフラ発達は遅れたものの、
スマホが普及したほか、
新型コロナウイルスの影響でPC・モバイルゲームが急速に広がっています。

なお、
ほとんどの国で中国企業が市場をリードしています
(多くの国で中国のゲームがシェアを5割は獲得、
中東だと7~8割にもなるといいます)。
一見するとアラブ人が作ったかのようなゲームに見えるものの、
実はそれも中国企業が作った作品だったなんてこともあるそうです。

ただし、
ゲームにお金を使っているのはごくごく一部で、
課金額もそこまで伸びていないといいます。
たいていの場合は無料のゲームを遊ぶか、
もしくはインフォーマルな形式
(つまり、非公式なあまりよろしくない手法)で
ゲームを入手するケースが多いそうです。

新興国は注目に値する市場であるのは間違いないのですが、
いくつか問題があります(このセッションでは「3つの矛盾」と表現)。
まず最初に、
賭け事であるカジノゲーミングと
ゲームが一緒くたになってしまっているということ。
これはユーザーのみならず業界全体がそうで、
インドやインドネシアでは、
政治家がカジノ規制をゲームにも適用しようとするケースもあるそうです。

前述のようにインフォーマルなビジネスが横行しているため、
フォーマルなビジネスがそれに阻害されてしまう可能性があります。
たとえば中国の上海はかつて
海賊版のゲームがたくさん売られていたようですが、
発展を遂げるにつれてフォーマルな場になっていきました。
が、新興国ではその兆しがなかなか見えないといいます。

佐藤氏によると、
それこそスラムにいる人たちもゲームを遊ぶそうです。
ケニアだとPS4で「METAL GEAR SOLID」シリーズを遊んでいる人を見たそうで、
(メーカーにお金を払うかどうかはともかく)
社会階層に関係なくゲームを遊ぶ環境ができあがっているといいます。

しかしながら、
課金しないプレイヤーも多く、
市場規模的に優先されるのは先進国となります。
ゲーム会社がSNSで先進国向けに優先して情報を発表すると、
「アラビア語で発表するのが遅い」など
抗議や文句も多くなることもあるそうです。

東南アジアのゲーム市場

次からは、
各地域のゲーム市場の詳細が語られます。
東南アジアには家庭用ゲーム機の市場もありますが、
モバイルが主流。
『Garena Free Fire』や『Mobile Legends』などのeスポーツタイトル、
あるいは暇つぶしのカジュアルタイトルでユーザーが別れているのも特徴。
また、
ひとりでやり込むタイプはあまり人気がないそうです。

eスポーツの人気はかなりのもので、
シンガポールで開催された大会
「Free Fire World Series」はピーク時に541万人の視聴者数を記録。
これは世界的に見ても稀だといいます。

大会視聴者の言語はヒンディー語が最も多く、
続いてポルトガル語(ブラジル)、
インドネシアなどが続きます。
英語圏は2%程度しかおらず、
非英語圏のユーザーをメインにできるほどの大規模大会が存在するわけです。

東南アジア向けのローカライズにも力が入っており、
たとえばゲーム内でK-POPアイドルとのタイアップを行ったり、
『Garena Free Fire』ではインドネシアの人気俳優を
キャラクターとしてゲームに出すケースも。
中国企業はマーケティングをかなりしっかりして
タイアップを行っているそうです。

韓国はインドネシアと貿易協定を結ぶ際、
貿易品目にオンラインゲームをきちんと入れるほどの力の入れよう。
外交施策できちんとアプローチを行っています。

投資家も東南アジアのゲーム産業に注目しています。
というのも、
ゲーム産業が盛り上がるとIT産業振興、
文化産業振興、起業家育成の3つの観点からしてもメリットがあります。
それゆえに民間団体・政府・教育機関が連携して
インディーゲームスタジオの育成プログラムを実施しています。

タイのアクセラレータープログラム「depa」も2021年から実施されており、
このプログラムでは小さなゲーム会社に
専門家がアドバイスしたりサポートを行うといいます。
また、
マレーシアやインドネシアでは、
ゲーム産業で成功した企業があとに続く企業のため、
基金やパブリッシング機会の提供を行っています。

東南アジアのゲームパブリッシャーが
息を吹き返しつつあるのも特徴だといいます。
タイのアジアソフトはPC向けオンラインゲームで成功していましたが、
2010年代にスマホが主流になってから業績が伸び悩んでいました。
日本もこのころ東南アジアに進出しようとして失敗していましたが、
現在は経験を積んでうまく運営が行えるようになってきたそうです。

東南アジアから生まれたゲームたち

あわせて東南アジア生まれのゲームがいくつか例として紹介されていました。
興味がある方はぜひチェックしてほしいです。

東南アジアでは毎月複数の注目タイトルが生まれるほどになっており、
ゲームのジャンルも多岐にわたるようになっています。
そうなってきた理由は、
現地に才能のある人たちがいるのみならず、
周囲の支える人たちも頑張っているからだといいます。

佐藤氏によると、
5年前は「これで世界市場は難しいのでは……」くらいの雰囲気でしたが、
インキュベータープログラムに関わって成功する人も増えてきたそうです。
インディーゲーム制作においては人同士の繋がりを作る人間も重要で、
それこそ官僚も前に出てきてどんどんマッチングを行うような
状況になっているとのこと。

南アジアのゲーム市場

南アジアの中心はインドですが、
前述のように2015年には市場規模が300億円と
あまり大きな市場ではありませんでした。
現在は市場規模1000億円を突破して急拡大しているといいます。

かつてはクレジットカートもプリペイドカードも
携帯決済も難しかったのですが、
スマートフォンの会社がまとまって携帯決済がしやすくなったり、
あるいは闇社会対策のためか政府が現金決算をやめさせた
(一般ユーザーも銀行口座を使うようになり、
電子決済が可能になった)ことも影響しています。

インドでは『PUBG Mobile』が爆発的な人気を得ており
(セキュリティの観点からインド政府によって一度BANされた)、
現在は『BATTLEGROUNDS MOBILE』と
リブランディングされ5000万DLを達成。
先ほども言及した『Garena Free Fire』というバトロワも人気になり、
インドでは「ゲーム=バトロワ」になっています。

多くの人がバトロワを遊ぶようになり、
それに伴ってゲーム実況が放映されるようになりました。
インドにはたくさんの言語があり
ローカライズするのは非常に難易度が高いのですが
(『PUBG Mobile』も基本は英語)、
ゲーム実況ではそれぞれのプレイヤーが自分たちの言語で解説をします。
つまり、
ゲーム実況の場で勝手にローカライズされるなんて流れもあるようです。
よって、
「ゲーム=バトロワ=実況があるもの=競うもの」という、
独特な感覚になっているといいます。

一方で、
特定ゲームの禁止を求める政治家も増えています。
『PUBG Mobile』のように社会現象となるゲームが出てきたのは
南アジアでは初めてのことであり、
インドやバングラデシュでは
政治家が大きなショックを受けているそうです。
やはりどこの国でもゲームに対する誤解を解く仕組みが必要なようです。

5年ほど前のインドのゲーム産業は、
アメリカのゲーム会社から外注を依頼されるケースが多かったのですが、
国内市場が活性化したことにより独自IPのゲーム制作が増えてきたといいます。
佐藤氏によれば、
もはや最近は立場が逆転しているのではないかというほど。

『PUBG Mobile』の影響でeスポーツが人気になり、
それにともなって「MPL(Mobile Premier League)」
というeスポーツプラットフォームが作られ、
現在東南アジアや中東にも進出しています。
しかし、
インドのeスポーツはわれわれの考えるeスポーツとは大きく異なります。

MPLの具体的な内容としては、
ビリヤードなどのゲームを遊び、
ランキング上位になると賞金のようなものが獲得できるというものです。
われわれの感覚からするとeスポーツとは呼び難いものの、
前述のインドならではの感覚からすれば
たしかにこれもまたeスポーツなのかもしれません。

南アジアから生まれたゲームたち

南アジアから生まれたゲームもいくつか紹介されました。
まだ日本では馴染みがない作品が多いかもしれませんが、
『ラジィ 古の伝説』のインドらしさのあるグラフィックや
美しさに驚いた人もいるでしょう。

佐藤氏によると、
いまはパキスタンもモバイルの外注は可能になるほど
技術力があがっているといいます。
ただし、
バングラデシュはまだ厳しく、
日本企業のリクエストには答えられないだろうとのこと。

また、
昔のインドのゲームも軽く紹介が行われました。
やはりクリケット、カバディ、ボリウッド(インドの映画産業)
といった地域に根ざしたゲームを作っていましたが、
残念ながらあまり売れなかったといいます。
しかし、
これらを手がけていたデベロッパーが外注によってなんとか生き延び、
インディーゲームを作れるようになってきたそうです。

中東のゲーム市場

中東ではアラブ圏がもっとも成長を遂げており、
サウジアラビアだけで市場規模は1000億円に到達しています。
また、
アラブ諸国は中国関連ゲーム会社の影響力がよそより強い。
TwitterなどのSNS、
独自プラットフォームを利用した
ローカルなコミュニティマネージメントが成功しており、
長く続いているそうです。

「Wizzo」というeスポーツプラットフォームもその例で、
こちらでもゲームで競争して上位になると賞を獲得でき、
最新スマートフォンやヘッドフォンなどの景品がもらえるといいます。

なお、
イランでは新聞で2020年の人気ゲームが調査されたのですが、
『あつまれ どうぶつの森』、
『The Last of Us Part II』、
『Ghost of Tsushima』、
『DOOM Eternal』、
『Fall Guys: Ultimate Knockout』、
『Among Us』など、
かなり日本・欧米に近いタイトルが挙げられていました。

イランは歴史上、
モンゴル帝国に支配されていた時期があるため
『Ghost of Tsushima』に何か感じるものがあったのかもしれません、
と佐藤氏は語っていました。

中東のゲーム産業はさまざまな投資が行われています。
MiSK財団がSNKに出資をしたのは大きなニュースになりましたが、
これ以外にもサウジアラビア政府系投資ファンドPIFがEA、
テイクツー、アクティビジョンに30億ドル以上の投資を行っています。
このほかにもゲーム会社を誘致したりと、
かなり努力をしているようです。

イスラエルでもゲーム関連ビジネスが伸びており、
eスポーツ選手をマッチングさせるサービス、
ゲーム関連ツールなどの関連企業がアメリカの投資を受けて成長しています。

「HYBRID」というゲームアクセラレーター
(新興企業に対して協業・出資を行う団体)では、
イスラエルがアラブ人のゲーム開発者を支援しているのですが、
スポンサーはなんと8200部隊(イスラエルの諜報機関)。
さらに、
これに対してアラブ首長国連邦の投資家が
お金を出すという複雑な流れになっています。

トルコはハイパーカジュアルゲームで大成功を収める企業が増えており、
年間TOP10に入るケースが2~3作品あるほど。
その大企業から独立した人がまた活躍しているほか、
「game factory」というインディーゲームの
インキュベーションプログラムが実施されているといいます。

中東から生まれたゲームたち

中東のゲームはかなり特殊なものが揃っています。
『Abo Khashem』はウォーターサーバーを武器にして
VRヘッドセットをつけた猫と戦う不思議なゲームです。
『The world will know THE TRUTH』は
現実の紛争を題材にした非常に重要な作品。
『Children of Morta』を作ったデベロッパーは
イランではヒーロー扱いだといいます。

ただし、
中東のゲーム産業にもまだ課題はあるようです。
アラブ圏は市場先行型で世界で成功するのは難易度が高く
(ただし将来性に期待できるとのこと)、
ヨルダンやレバノンはハイパーカジュアルを多く制作しています。
インディーゲームの場合はGCC諸国に独自性があるのではないかと
佐藤氏は分析しています。

終わりに

さまざまな課題はありますが、
すでに新興国でもゲームは生活の一部となっており、
多くのユーザーが存在しています。
審査・レーティング制度など秩序作りの動きも出始めており、
今後存在感を増すのは確かでしょう。

新興国からは後発ならではのゲームが出てくるほか、
ゲーム産業を育てようという意識を持っている国も多い。
しかも今後は、
新興国に対する投資のみならず、
新興国からの投資もありうる。
今後も注目を集める市場となっていくでしょう。

まとめ

この記事には、新興国のゲーム事情が書いてあります。
とても興味深い内容でした。
東南アジア、南アジア、
中東と分けて詳しく書かれているので、
とても分かりやすかったです。

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